被曝・診療 月報 第28号 松江寛人名誉院長への追悼文 「貴方が築いた診療所を守り抜きます」  

 

この号の内容

1 帰還強制に抗う福島県民と連帯を
2 松江寛人名誉院長の追悼文
3 隷従の「科学」一学術会議声明に接して思う②
 琉球大学名誉教授 矢ヶ崎克馬
4 第30回福島県民調査検討委員会傍聴記
ふくしま共同診療所事務局長 須田義一郎
5 福島とハンフォード中間施設、イノベーションコースト構想から見る福島浜通の現状② 岡山 浩

松江寛人名誉院長への追悼文

貴方が築いた診療所を守り抜きます

本町クリニック院長 杉井吉彦

ふくしま共同診療町の初代医院長を務められた、松江寛人名誉院長が、3.11東日本大言災・福島第一原発事故からまさに7年の、3月11日逝去されました。
昨年3月10日脳出血を発症し、11日深夜に開頭血腫除去術を行い、1年問の壮絶な闘病を経てでした。享年81歳。
松江先生は、千葉大学在学中の1960年、安保闘争の真っ只中に、全国の医学部自治会の組織「医学連」(全日本医学部学生自治会連合)の委員長として、最先頭で闘われました、卒業後「国立がんセンター病院」で38年間勤務。放射線診療部長として、日本の放射線診断学、特に、日本における「超音波検査」の先駆者・指導者としてゆるぎない権威を確立してきました。また米国タフツ大学放射線科客員教授としての活躍も医師としての経歴としてすばらしいものでした。
2001年に「国立がんセンター」退官後は、銀座・杉並に「がん総合相談センター」を開設し、がん患者・家族に心から寄り添い、診察・相談を全力で取り組まれました。
2011年の秋、福島第一原発事故で放出された、放射線による健康被害から県民を守るためには、独自の医療機関が必要だと、「福島診療所建設委員会」が設立されました。そのとき松江先生が、「私は、放射線科の医者ですが、放射線科医は、危険を感じてまで、仕事をやっています。本来はあってはならないものです。しかも、われわれは医療のために放射線を使っていますが、そうではなくて、別の目的で使っていることは、本来に許しがたい」「放射線というものはそもそも私に言わせれば、ゼロ以外ぱ危険です」(2015年3月 「第1回 被曝・医療 福島シンポジウム開催挨拶」と断言し、初代院長を引き受けられました。「それに賛同したわれわれ医者が『じゃあ、無給であろうと無報酬であろうと、とにかくやりましょう』ということで始まったのです」(同上)。当時すでに70代後半だった松江先生の決断が、私を含め医師グループの決意をうながし、まさに先生の指導なしには開設・運営はなかったといえます。
そして2014年11月に布施先生が新たに院長を引き受け、名誉院長になられてからも、常に、診療の中心でありました。 2017年の3月12日の『第2回被曝・医療福島シンポジウム』の実行委員長として呼びかけ、開催の前日に倒れるまで、叱咤激励を、診療所のすべての関係者に送り続けられました。
開設後は、甲状腺超音波検査を駆使し、診療、指導に本当に真摯な、厳しい態度で臨まれました。『小児甲状腺がんば放射線の影響でない』と主張する、県当局・福島医大・調査検討委員会に徹底的に対決(戦闘性は常に我々のレベルを超えていました)してこられました。この精神を私たちは必ず受け継がねばなりません。
松江先生、本当にありがとうございました。
そして私たちは誓います。「広島には、肥田舜太郎先生、福島には松江寛人先生」この二人の、放射能による健康被害に苦しんでいる人々に、心の底から寄り添い、診療を続けられた精神を、必ず引き継いでいきます。みんなとともに確認した『ふくしま共同診療所』の医療方針・・『避難・保養・医療の原則』を実践していきます。
松江寛人先生、安らかにお眠りください。
合掌。

帰還強制に抗う福島県民と連帯を

帰還強制に抗う福島県民と連帯を3。11反原発福島行動での挨拶から

ふくしま共同診療所院長 布施幸彦

ふくしま共同診療所は開設してから5年間、診療を含め様々な活動をおこなって来ました。これも全国・全世界の皆様の様々な御支援のお陰です。最初に感謝申し上げます。本当に有難うございました。その上で、今後も活動を続けられるよう更なる御支援をお願い申し上げます。
診療所が取り組んでいる「被曝と帰還強制反対署名」への御協力にも感謝申し上げます。署名は現在48、520筆集まっています。私たちは県にこの署名を提出し、今までに5回、県当局と交渉してきました。県の回答は「ゼロ回答」ですが、今後も署名を集めて、粘り強く県当局と交渉を行い、県に圧力をかけていく所存です。そのために、今後も署名の御協力お願いします。

甲状腺エコー検査の拡充こそ、福島県民の要求

今、福島県では小児甲状腺検査を縮小しようとする動きが強まっています。福島県県民健康調査検討委員会、甲状腺検査評価部会、福島県立医科大学が公然と甲状腺検査を縮小し、自主検査にしようとしています。1月26日の甲状腺検査評価部会で、高野徹委員は「学校検診という形で、‥・強制力を持って検査が行われている‥・。これは子供の人権問題」と、甲状腺エコー検査が子供の人権を踏みにじる行為だと断じ、中止するように提言しています。現在小児甲状腺がんないし疑いが197人、手術して甲状腺がんと確定した子供が160人と公表されています。しかしそれ以外にも9名が手術を行っており、今までに200名を超える甲状腺がんないし疑いが発生しています。
県民健康調査検討委員会は1巡目の検査で甲状腺がんないし疑いが116人発見された時には、「放射能により甲状腺がんが発生するには5~10年かかる」と主張していました。彼らの主張でもこれから甲状腺がんが増えていくことになります。それなのに彼らは甲状腺検査を自主検査にしようとしているのです。

この動きに対して、福島の住民は「甲状腺検査を維持」するように県当局に申し入れを行っています。福島県民の声は「甲状腺検査をこのまま続けろ」です。木目の集会には参加されていませんが、昨年私と韓国の国会議員会館で発言した大人の甲状腺がん患者の大越さんは、『週刊金曜日』の3月9日号で「『福島県民健康調査』のおかしさ、差別、そして子供たちの未来」と題して大人の甲状腺がんについて発言しています。大人の甲状腺がんも増えているのです。診療所も「甲状腺検査を維持し、更に大人にも拡充」するために、県内各地で大人も含めた無料甲状腺エコー検査と講演会を行っています。木日も午前中にこの会館の隣の公民館で甲状腺エコー検査を行ってきました。 11人が参加して下さいました。
2月には郡山市と自主避難者を対象に長野県松本市でも行いました。私たちはこれからも、甲状腺検査を維持・拡充させるために、県内外で、講演会と無料甲状腺エコー検査を行っていきます。

高汚染地区へは帰らない

避難指示が解除された町に帰った住民は、浪江町2%、富岡町2%、飯館村7%、南相馬市小高区19%、楢葉町26%だけです。浪江町の世帯数は6、950ですが、その内、約3、000軒が更地になります。理由は、家があると固定資産税が発生するからです。
2018年から50%、2021年から100%。そのために家を解体しているのです。建物がなくなれば固定資産税は安くなります。帰る気がないから、解体して、ているのす。避難指示が解除されても多くの住民は、高汚染地区に帰らない闘いをしているのです。

子どもを人質にする帰還強制を許さない

飯舘村や川俣町山木屋地区では、今年度から「小中一貫教育」と称して、学校を元の場所で再開させます。「小中一貫教育」と言っても特別な教育はなく、生徒数が少なくなったので一貫校にしただけです。震災前には、山木屋地区では生徒数が減ってしまったので廃校にし川俣の小中学校に統合させる計画が出ていましたが、原発事故があったので元の場所で再開したのです。川俣町の教育長は「地域に学校がなくなると地域が発展しないから学校を再開する」と述べています。学校を再開することで、子供を人質にとって、強制的に住民を帰還させようとしているのです。私たちは「被曝と帰還の強制反対署名」を県内の小中学校を中心に行っています。県教組のある支部が署名に取り組むことを決定しました。現場の教職員が学校再開に反対すれば、学校再開を止めることが出来ます。

「自主避難者」は立ち上かっています

県外の「自主避難者」への住宅補助は昨年3月で切られました。しかし彼らの闘いも始まっています。米沢市の雇用促進住宅に「自主避難」した8世帯に対する住宅明け渡し要求訴訟が山形地裁で行なわれています。国により被告とされた武田徹さんは「住宅補助が打ち切られ生活は苦しいが、福島の土壌は汚染されたままで子どもの内部被ばくが心配で帰れない。地域のつながりも奪われた」と陳述し、記者会見と報告会では「私たちが闘っている相手は国家権力。だからなかなか声を上げられない。私はみんなの声を代弁していると思っている」「避難者の個々の事情を無視して、一方的に補助を打ち切る、そんなやり方はまちがっている。正していきたい」と、人生を賭けて闘うことを宣言しています。武田さんをはじめ、多くの「自主避難者」が人生を賭けて裁判闘争を闘っています。彼らを支援し共に闘って行くことが必要だと思います。
東京オリンピックを口実とした国や県による甲状腺検査の縮小・被曝と帰還の強制が強まっています。しかし福島県民の闘いも陸続と始まっています。彼らと共に生き、共に闘って行きましょう。本日をその第一歩としましょう。診療所は、福島県民と共に、全国・全世界の仲間と共に闘って行くことを誓って、集会の挨拶とします。御静聴有難うございました。

 

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