被曝・診療 月報 第40号  コロナ感染拡大と医療崩壊 

この号の内容

1 コロナ感染拡大と医療崩壊

2 私の原爆放射線による被爆線量の研究

3 被曝ア5年目の8・6ビロシマ大行動へ

4 イ主民被曝防護の放棄と福島原発事故

5 県民健康調査検討委員会及び
甲状腺検査評価部会報告

コロナ感染拡大と医療崩壊

本町クリニック院長 杉井吉彦

 新型コロナウイルス感染症は、世界中がまさに「パンデミッナ」となり7月23[ヨ現在で1520万人の感染者、死者60万を越える事態となっています。

米国トランプ大統領の「99%は完全に無害」、ブラジル・ボルソナロ大統領の「コロナ感染拡大抑制は経済殺す」発言に見られるように、感染予防対策を軽視し、「経済を廻す」政策が、幾多の人々に被害を拡大しています。

米・ブラジル・インドで各々100万人を超える患者数、中南米・アフリカ南部での患者増加が顕著となっています。5日間で100万人の新規患者の増加を見ています。有効な抗ウイルス剤の確定も成功しておらず、ワクチンの開発は、きわめて拙速で、強引な開発が進んでおり、効果の未確定や副作用の無視が行われたままでの、大量接種にいたる危険性が高まっています。

日本では7月23日現在、感染者2万8千名、死者1千名の状況で「非常事態宣言」の解除後1ヶ月で、「第2彼の到来」段階に入っていると考えられます。

新規感染者が1千名弱、東京を始めとして、大都市圏を中心に感染の拡大が、「始まって以来・宣言解除後以来」の都府県が多数見られ、高い新規感染者の発生を見ています。

① 学校休校から始まり、「緊急事態宣言の全国発令」を軸とした様々な安倍政権の政策は、施策の失敗、無定見、認識の甘さ・誤りから、安倍内閣の感染予防対策を評価しない60%、内閣支持率32%(数字は7月18日調査の毎日新聞世論調査による)の情勢になっています。

感染予防対策で、最も希望の多かった、PCR検査(結局この検査が医学的に予防政策的にも極めて重要なのは明らかとなっている)の数の増加・検査体制の確立・有機的な連携の効率化が、現在に至るまでなされていない事、全世界的なPCR検査数と比べて、充分にできる医療・経済体制があるにかかわらず、充実・整備されていないこと、そして「二波」に間に合っていない。

「検査数を増やすと、軽症の感染者数を見つけてしまう」とか[検査で、誤判定をする可能性かおるから、患者に余計に負担がかかる]などの、全く誤った、非科学・非医学的な理由を挙げて、意図的に、検査数を増加させていないのは、全く怒りに堪えないです。

② このような状況の中で、現在「2彼の到来」段階を迎えているのだが、明らかに、安倍政権はコロナ感染に対する方針を変えつつあります。「感染の抑制と、経済をまわすの両立論」です。
コロナウイルスの特徴から(感染後発症までの期開か長い・症状が少なくても感染させる可能性かおる等々の理由仁見れば、予防策とは全く矛盾した方策を実行しようとしています。
そして、結果的には「感染の抑制は行わない、放置する」ことになってしまっています。

③ 感染者の増加に対して「全国規模での緊急事態宣言」の要件を満たしているにかかわらず、「重傷者のみ増加しなければ(一波ではこの項目は全く入っていない)医療体制に余裕があるので、宣言は現在のところ考えていない」と、全く前言を翻しています。

「医療体制に余裕がある」と考えている政府・行政は、(とりわけコロナ感染症を受け入れた病院では)急速なベッド整備や人員の配置の困難性から「余裕」など全く無い状況であることを理解せずづ「医療崩壊」を、すなわち「救える命を救えない」状況を作るうとしています。

④西村大臣の「あのような事(非常事態宣言)やりたくないでしよ」の発言は、『経済活動をまわす』のが重要であって、非常事態宣言で「(100%の)補償なくして、自粛せよ」状態を強制した。この政策の決定的な強権的なひどさが、生活危機に陥らせた人々に、逆に責任を転嫁しています。

⑤ 世論調査で「コロナ対応について、どちらかといえば感染防止を優先すべき67%」「緊急事態宣言を全国に発令すべき20%・地域を限定して発令すべき64%」と表わされている健康と命を守るべきだとの思いを踏みにじり、健康被害を拡大する政策・方針は、訂正・撤回すべきです。

 よりに拠って「GoToトラベル」の前倒し実行は、「経済活動重視」の明らかな施策であり、「東京以外も見送るべき69%」と人々の怒り・反対の意思は極めて高い。

 (緊急事態宣言)の効果は、検証されなければならないが、政府・東京都などが再度の「宣言」に全く否定的なのは、これによる当然の要求である「補償要求」に耐えられない、現代社会の脆弱性を指し示している。補償も無く、生活困難に直面している多数の人々を全く守れない社会の命運は、つきかけているともいえよう。

  重要なことは、この一巡の事態の中で「医療崩壊」が起こったことです。それは、医療従事者をはじめとして、介護・健康産業・運輸・文化等々に就く多くの人々に「命と健康を守る」事の重要性を、あらためて深く突きつけた事です。

「自粛」「生活不安」「感染恐怖」よる受診抑制が、全国の医療福祉部門に及び、感染が長期化し経済状況が悪化するほど、国民皆保険・健保体制が始まって以来の、この面からの[医療崩壊]が始まりつつあるといえます。

日本医師会のアンケートでも「このままでは廃業の可能性2.5%」であり、地方で集中的に進行する可能性があると思われます。

 現在の医療の在り方をトータルに考え直し、行動する必要に迫られています。

⑩福島では放射線被曝と感染症の中で、健康を守る必要性がますます重要になってきたと考えます。