№ 22 特別号 「3.12 被曝・医療 福島シンポジウム」 報告集

目 次

〈はじめに〉第2回 被爆・医療 福島 シンポジウムの呼びかけ … 1
第2回シンポジウム実行委員長/ふくしま共同診療所名誉院長 松江寛人

コーディネーターのあいさつ 国分寺市 本町クリニック院長 杉井吉彦… 2

放射性微粒子暴露原因説で解ける銀縛被爆者における健康リスクのパラドックス… 4
――フクシマの皆さまへの提言―― 広島大学原爆放射線医学研究所 大瀧 慈

韓国の原発周辺における疫学調査… 11
前原子力安全委員会委員/反核医師の会運営委員/東国大学医学部教授
キム・イクチュン

いま私たちがしなければならないこと…… 15
放射能から子どもたちを守る全国小児科医ネットワーク代表 山田 真
被爆の強制とたたかいの最前線から ふくしま共同診療所院長 布施幸彦 … 20

会場からの発言 … 24
庄野ファーム 大越良二
国鉄水戸動力車労働組合副委員長 高野安雄

ビデオレター…… 26
核戦争防止国際医師会議 ドイツ支部会長代行 アレックス・ローゼン

質疑応答 …… 27
1 会場から提出された質問書にたいする回答
2 シンポジストの相互討論
3 会場からの質問

〈寄稿〉今、何がフクシマに問われているか …… 33
やまぐちクリニック院長/現代医療を考える会代表 山口研一郎

参加者のご感想…… 35

韓日国際シンポジウム報告
国分寺市 本町クリニック院長 杉井 吉彦… 36

資料 《被爆と帰還の強制反対署名》福島から声を上げよう!
職場・学園・地域で集めよう …… 41


【発行所】 ふくしま共同診療所
〒960-8068 福島県福島市太田町20―7 佐周ビル1 階
(TEL)024-573-9335  (FAX)024-573-9380
(メール)fukukyocli@ark.ocn.ne.jp
【編 集】 本町クリニック事務局
〒185-0012 東京都国分寺市本町2-7-10 エッセンビル2 階
(TEL)042-324-9481  (FAX)042-400-0038
(メール)suzuki@honkuri.com
【頒 価】 650円
(銀行口座) みずほ銀行 国分寺支店
普通 4282013
名義 『被曝・医療月報』


ビデオレター

核戦争防止国際医師会議 ドイツ支部会長代行
アレックス・ローゼン

今日は、アレックス・ローゼンと申します。福島の原発事故は6年前のことでした。日本政府と原子力産業は、事故を克服したと信じ込ませようとしています。しかし原発事故は今も続いています。福島県民だけだなく日本全国の人々が原発事故の影響を受けて暮しています。いまなお、10万人以上のもの人々が全国に避難して暮しているのです。
放射能で汚染された故郷に帰れないからです。原子炉内の放射線量は信じられないほど高く、人間が数分以内に死に至る数値です。
2月に福島県立医大が最新のデータを公表しました。この6年間で甲状腺がんが爆発的に増えています。事故の放射能で直接的に引き起こされた病気です。184人の子どもが甲状腺がんと診断されています。145人が手術を受けました。そして甲状腺がんが摘出されたのです。38人の子どもたちは、まだ手術待ちの状態です。
ここ2年間で見ると10万人に8.1人の割合で甲状腺がんが発症しています。しかし、通常日本では10万人に対して0.3人です。つまり、27倍になるのです。今後、この数は激増すると考えられます。
原子力産業は、これをスクリーニング効果のせいだと主張しています。しかし、2年前の検査で異常がなかった子どもにも甲状腺がんが次々と見つかっています。検査を行っている福島県立医大は最早中立的な科学機関とはいえません。IAEAから資金援助を受けているからです。IAEAは核エネルギー開発のための機関です。福島県立医大の緑川教授は、県内の学校を回って出前授業を行い「意味のないがん検診」は拒否できると説明し、検査の縮小を狙っています。これは、原発事故の影響を過小評価しようと意図しているからです。政府と原子力村が強く後押ししています。
事故で汚染されたゴミの問題も深刻化しています。汚染土壌は福島県内にあふれかえり日本全体にとって重大な問題になっています。核のゴミをどう処理すべきか、解決策がないからです。南相馬市などで実証実験が行われ公共工事に使用される土砂の放射能汚染の基準を1キロ当り3000~8000ベクレルへ引上げました。道路や防波堤などの公共工事にこれを適用することは、住民に新たな放射能被害をもたらすばかりでなく未来の世代と環境に途方もない危険をもたらします。100ベクレルというもとの基準に戻すべきです。
でも、暗い状態の中にも、光があります。福島原発事故後にいくつかの団体が設立され、核エネルギーに反対してクリーンで安全で健康な未来のためにたたかっています。
地元でも福島にふくしま共同診療所があり、いわき市に放射能市民測定所あり、私たちはそれらの活動を支援しています。最近では、日本の著名な医師や科学者たちが、福島原発事故の規模について調査しています。たとえば、岐阜環境医学研究所が日本の子どもたちの乳歯中のストロンチウム濃度の研究をしています。これもIPPNWドイツ支部が強く支援しています。
今日は、お話の機会をいただき、ありがとうございました。本日のシンポジウムの成功をお祈りしています。

あとがき
*シンポジウムでも触れられていますが、「フクシマ」の状況は過酷で悲惨なものです。シンポジウムの開催が、微力ながらも「実状と解明」に一歩でも迫るものとなったと思っています。
*4月1日より「避難指示解除」が反対の行動を無視して強行されました。今こそ「避難・保養・医療」の原則が、福島県民の「命と健康を守る」重要な指針となって行かねばならないと思います。
*今村復興大臣の「自己責任」暴言は、安部政権の意思そのものです。怒りに堪えません
*シンポジウムで語られた「実状と解明」は国際的事業です。ドイツ、台湾に続いて韓日の人々がまさに「共同」して、原発廃絶に向かって進まねばならないと思います。
*シンポジウムに協力・協賛していただいた皆さんに、深く感謝・御礼申し上げますとともに
この報告集を活用していただけるよう願ってやみません。