被曝・診療 月報 第39号  新型コロナはパンドラの箱だ

この号の内容
1 新型コロナはパンドラの箱だ
2 東電の汚染水対策を批判する
(たんぽぽ舎 山崎久隆)
3 Letter From IIDATE
(飯館村在住・伊藤延由)
4 新型コロナウイルスの感染拡大に想う
(八尾北医療セッタ一院長・末光正道)

新型コロナはパンドラの箱だ

ふくしま共同診療所院長 布施幸彦

1.はじめに

新型コロナウイルス感染症(COVID 19) が全世界で蔓延しています。5月13日現在で、世界の感染者408万8,848人(死者28万3,153人、死亡率6.9%)、日本の感染者1万6,731人(死者681人、死亡率4.0%)。インフルエンザの死亡率0.1%に比べると格段に危険です。人に感染するコロナウイルスは、今までに6種類見つかっており、このうち、4種類のウイルスは、一般の風邪の原因の1O~15% (流行期は35%) を占め、多くは軽症。残りの2種類のウイルスは、2002年に発生した重症急性呼吸器症候群(SARS: 8069人が感染し775人死亡:死亡率9.6%) や2012年以降発生した中東呼吸器症候群(MERS:2494人が感染し858人死亡死亡率34.4%)。今回の新型コロナは、2019年に発見された7番目のコロナウイルスです。

人類の歴史は感染症との闘いの歴史です。100年前には1918年から20年まで足掛け3年で少なくとも4千万人の命を奪ったスペイン風邪がありました。日本の過去100年間をみても、1899 年~ 1950年までは感染症が死因の1位。抗生物質の発見により感染症の脅威はなくなったかのように思われていましたが、新型コロナが感染症の時代は終わっていないと登場したのです。

安倍政府は、日本で最初に感染者が見つかってから、空港や港などで水際作戦を行いました。しかしクルーズ船で多数の感染者が発生し、更にクルーズ船とは無関係の感染者が日本各地で発生しました。感染が日本各地へ拡大したため、安倍首相は「全国の小中高の休校及びイベント自粛」を要請。そして新インフノレエンザ特措法を改悪し、東京オリンピックの1年延期を発表し、全国に緊急事態を宣言しました。安倍首相は住民の命より「復興オリンピック」開催のために、2か月以上新型コロナ対策を行わず放置したため、全国に感染が拡大しました。

2. 世界の新型コロナ禍の環状(5/13現在)

アメリカ感染者136万9,376人・死者8万2,356人・死亡率6.0%中国感染者8万4,018人・死者4,637人・死亡率5.5%
イタリア:感染者22万1,216人・死者3万0,911人・死亡率13.9% ドイヅ:感染者17万3.171人・死者7.738人・死亡率4.4%

世界の死亡率を見るとイタリアの死亡率が飛びぬけて高いのが分かります。同じEUなのにドイツとイタリアの死亡率を比べるとイタリアはドイツの3.2倍です。この違いは新型コロナ対策と医療制度によるものです。ドイツは、①パンデミックを想定して準備し、新型コロナ発生後すぐに対策を開始し、② PCR検査を拡大し、③接触者を含めた徹底した隠離と外出制限を行いました。イタリアの死亡率が高い理由は、医療制度の脆弱性のためです。イタリアは、2007年~ 2008年世界金融恐慌の影響で2兆4千億ユーロを超える公的債務を抱えました。欧州銀行から、国債を買い取る形で救済されましたが、EUから厳しい財政規律を課され、医療費が大幅に削減されました。1人当たりの医療費は1/4に減らされ、758病続が閉鎖され、病床数は激減しました。早期退職と給与削減のため医師不足も引き起こしました。重症者を治療するICU(集中治療室)のベッド数をドイヅとイタリアで比べると、人口10万人当たりドイツ29~30床に対して、イタリアは12床と1/3しかありません。

3. 階級が生死を決める

アメリカの感染者数は世界の1/3を占めています。医療先進国アメリカでは階級が生死を分けています。皆保険制度のないアメリカは無保険者が約7000万人(内、不法移民2000万人)。新型コロナに感染しでも医療費が高額なため受診することさえ出来ません。路上生活者などの多くは受診しないまま死亡しているため、コロナ感染死とカウントされていません。死亡者をアメリカの地図に点打ちすると貧困地域に重なります。新型コロナが単に自然災害ではなく、貧困と格差、階級の問題であることを突き出しています。患者は圧倒的に黒人かヒスパニック系です。医療サービスが貧弱な地域に黒人が住むケースが多く、黒人に感染が急拡大しています。

4.日本もイタリアの二の舞だ

日本もイタリアと同じように医療崩壊の瀬戸際にいます。新型コロナに対応できる感染症病床は、1998年に9060床ありましたが、現在1869床まで減少。重症者を治療するICUも少ないのです。人口10万人当たり5床とイタリアの1/2以下。その上日本の集中治療体制は欧米より脆弱。新型コロナ重症者に対応できるのは「1千床にも満たない」と日本集中治療医学会が声明を出しています。その上医師も足りません。日本の医師数は、経済協力開発機構(OECD)加盟国の平均約44万人に対し約32万人と12万人も少ないです。この医療崩壊の危機の中で、厚労省と東京都は更なる病床削減を行おうとしています。厚労省は、感染症病床全体の9割以上を担っている公立・公的病院のうち440の統廃合を進め、5年後までに病床を20万床減らそうとしています。東京都も都立病院の独法化方針を決定し病床削減を行おうとしています。PCR検査体制も崩壊しています。保健所はPCR検査の必要性を決める要ですが、1992年の852カ所から2019年には472カ所とほぼ半減されました。PCR検査を担っている衛生研究所の職員数も減らされてきました。国立感染研究所の研究費は2009年度61億円でしたが、2018年度に41億円に削減され、研究者も2009年の322人から307人に減らされています。

5. 新型コロナ対策は2022年まで断続的に続く

米国ハーバード大学は、新型コロナの流行は一度きりのロックダウン(都市封鎖)では終わらず、医療崩壊を妨ぐにはソーシヤルディスタンスが2022年まで断続的に必要になると予測しました。またドイツのメルケレ首相は「過去の疫学的経験上、国民の相当大きな割合が感染することになり、専門家は60%から70%と予想している」と述べました。この話はドイツだけのではありません。人類の6~7割が感染しないと終わらないと言っているのです。

6.余世界の人々と共に未来を開こう!

新型コロナとの長い闘いは始まったばかりです。一時的に収まったかのように見えても、スペイン風邪のように第2波・第3波と襲ってくる可能性があります。個人だけでなく国家間のソーシヤルディスタンスは当分必要でしょう。新型コロナもいずれ収束します。しかし新型コロナ後の世界は、経済や価値観も含めて今までとは全く違う世界となります。一つはっきりしていることは、1930年代と同じにように、世界が分裂し、大不況と大失業と貧困の嵐が吹き荒れることです。100年前のスペイン風邪のあと、世界は第二次世界大戦への道を進みました。今回はどの道を選択するのでしょうか。新型コロナはパンドラの箱です。だから希望もあります。それは新自由主義の圧政に抗して、感染者や労働者の命と生活を守るために新型コロナ禍と闘っている日本も含めた全世界の人々です。そして彼らの存在が未来を決めます。彼らを信じて彼らと共に、未来を切り開きましょう

(この要旨は雑誌「No Nukes」 に載せました)

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