被曝・診療 月報 第21号  韓日国際シンポジウム 原発と健康~日本のふくしまと韓国の原発周辺

福島原発事故後の健康被害と
韓国原発による甲状腺がんの実情  
ふくしま共同診療所院長 布施幸彦

左からイ・ホンジュ氏(博士/女性医院院長)杉井氏 布施氏 ペク・トミョン氏〔ソウル大学教授〕大腰良二氏

1月18日(水曜日)に韓国の国会構内にある議員会館第二小会議室に於いて、「原子力発電折と健康~日本のふくしまと韓国の原発周辺」と題する韓日国際シンポジウムが行われました。私と本町クリニック院長杉井吉彦医師と福島の甲状腺がん患者の大越良二さんが参加しました。

主催は、「反核医師の会」、「脱核エネルギー転換国会議員の会(共に民主党・国民の党・正義党の3党)」、「脱核エネルギー教授の会」、「脱核法律家の会ひまわり」です。
東国大学医学部のキム・イクチュン氏の司会で、主催団体の祝辞が続き、私とペク・トミョン教授(ソウル大保険大学院)、イ・ポンジュ医師氏の講演と大越良二さんのお話(「証言」)がありました。その後パネルディスカッションが行われました。杉井医師もパネラーとして発言しました。

参加者は158人程度で、当初主催者は50人位と考えていたとのことなので、非常に関心が高いことが示されました。シンポジウムは同時通訳で行われました。インターネットで同時配信もされ、ユーチューブにもアップされました。マスコミは7~8社が取材に来ており、翌日のニュースに多数取り上げられました。韓国での福島原発事故への関心の高さがうかがえます。その理由は韓国の原発事情にあります。

韓国の原発

韓国では4か所に原発があり、21基が稼働中で4基が試験運転中です。2021年までに更に7基が建設されます。韓国の原発は住宅密集地に隣接して設置されています。例えば古里原発は建設中を含め8基あり、半径30km以内に380万人が住んでいます。今まで韓国では地震がなく、日本と違って安全だと言われてきました。しかし、昨年9月12日に古里原発がある慶州付近でマグニチュード5.8を記録する地震が発生し、韓国でも地震による原発事故が起こる可能性が指摘されるようになりました。韓国で事故が起これば福島以上の健康被害が起こる可能性が高いので、福島原発事故への関心がさらに高まったようです。
 訪韓までの経過

このシンポジウムをコーディネートした反核医師の会のキム・イクチュン教授は、反核医師の会のリーダーであり、2年前に福島市で開催した「3.8被曝・医療、福島シンポジウム」で[韓国の脱原発運動の現状一放射能と健康を中心に一」と題して講演し、「原発5km圏内では女性の甲状腺がんが通常の2.5倍発生していることを疫学的に証明し、これを根拠に甲状腺がんの患者が裁判で一部勝訴し、現在558名が裁判を準備している」事を報告して頂きました。
1.8シンポジウム後に、キム・イクチュン氏と次回は韓国でシンポジウムを行おうと話し合いました。今年の春、私か訪韓しキム氏と相談しました。
キム氏は、韓国で韓日シンポジウムを行うならば、 ̄原発事故後に甲状腺がん以外にどのような病気が増えたのか_を明らかにできるものであって欲しい、そして韓国国会内の施設で開きたいと」との大変意欲的な回答でした。そうした経過で上記諸団体が主催し、1月18日に韓国国会内の施設で行う事となりました。

4人の報告

ソウル大学ベク教授は、韓国原発周辺の甲状腺がんの発生の詳細とその組織型についての現在までの知見について報告されました。
イ博士は、福島原発事故後の関連死と韓国で事故が起こった場合の人的被害の大きさについての報告をなされました。(*)
私は、「福島原発事故後の放射能による健康被害」と題して、福島での小児甲状腺がんの多発についてと、難病患者や自然死産の増加などの放射能による健康被害について報告しました。
大越さんは「韓国電源公社と闘う仲間達へ」と題して、自身が甲状腺乳頭がんとなり手術し再発の不安を抱えながら、国と東京電力によって引き起こされた放射能被害を告発していると話され、原発によって生じた甲状腺がんの裁判を闘っている韓国の患者さんたちにエール送りました
質疑応答
質疑応答では、日本の我々に対して様々な質問がありました。それは、福島の現状をできるだけ正しく知りたいという事、韓国で何かできるのかという真摯なものでした。
質問が多く、シンポジウムは大幅に時間が超過しましたが、成功裏に終了しました。
主催団体の祝辞には、このシンポジウム開催の意気込みが感じられます。ウ・ウォンシク氏とキム・ジョンポム氏の祝辞を掲載します。
(※)古里原発訴訟の一部勝訴に続いて行われている原発周辺住民甲状腺がん患者集団訴訟原告(600入超)を対象とするソウル大保健大学院研究チームによって進行中の疫学調査。報告者のペク・トミョン教授はその主任。同報告は原発が事故に至らず通常稼働でも周辺住民に健康被害を及ぼす事実を確認しようとする極めて貴重な研究。同研究はいまだ結論には至っておらず中間的報告が行われた。

2017年1月18日  韓日シンポジウム ダイジェスト


今号の内容
1.韓日国際シンポジウム報告
2.シンポジウムに参加して
 本町クリニック医院長 杉井吉彦
3.ふくしま共同診療所報告会IN南相馬
 ふくしま共同診療所事務長 須田 儀一郎
4.意見陳述書
5.福島の現状


お知らせ 『第2回被曝・医療福島シンポジウム報告集』 
頒価650円 2017.5.1 発行予定

福島県内外から200名を超える方々にご来場をいただきました。 会場からたくさんの質問が寄せられましたが、時間の関係で、すべてに回答することが叶いませんでした。申し訳ございませんでした。

 

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